はじめに

研究室の目標と方針

研究の目標

持続可能な世界像を探求し、人々に提示することが当研究室の目標です。当面のターゲットは、21世紀の水・食料・再生可能エネルギーに関するビジョンの作成です。

既存の分野でいえば、水文学、水資源学、河川工学、気候学、地球物理学、地理学での活動が多いのも確かですが、地球システム科学という形で様々な学問が融合しつつありますし、技術や歴史、文系分野も研究の要素、対象となります。

対象とする「世界」とは、全世界でもアジアでも、東京の一地域でも構いません。とはいえ、いまや東京の一地域であっても世界全体の動向と無縁ではありません。

私のこれまでの研究のバックグラウンドの都合上、水循環と水資源を起点としますが、幸いこれがたぶんベストだと思えます。石油などの化石資源はいつか枯渇するでしょうし、地球温暖化の脅威もありますから、想像外の驚くような新技術が現れない限り、人類は自然から得られるエネルギーとサービス(ecological service)に益々依存せざるを得ません。今だって、実は、相当依存しているのです。そして、その中心には水循環があります。

研究の方向性

世界人口は今世紀半ばか後半にはピークを打つでしょうが、最大80-90億人にはなりそうです。温暖化や化石燃料の枯渇も今世紀の問題です。まずは次世紀に迷惑をかけず今世紀を乗り切るための水・食料・エネルギーに関するビジョンを、水循環と水資源を起点として提案したいと考えています。

食料を作るには水が必要ですし、これからのエネルギーは水や気候と大いに関係します。気候変化(温暖化)の脅威は第一に、水関連の災害の形で現れることでしょう。中心あるいは基点に水を考えるべき所以です。多くの地球環境問題の中心には水が流れています。途上国発展や平和構築においても水は重要視されているのです。

いわゆる地球環境の研究をしますが、悲観的な未来を提示し、人々に我慢を強いることが目的ではありません。悲観的な未来を予想することもありますが、それは予想された未来を変えるための目安でしかありません。他人の流行の言葉を借りると安っぽくなりますが、持続可能な世界を探すことは現代の最高の知的チャレンジであり、Yes We Canといえましょう。研究は前向きでなくちゃいけません。(引退のときにでも見直すと、きっと流行り言葉も何かの歴史的検証になるでしょう(笑))

すぐに新聞や政府、国際機関に採り上げられるような研究も、十年後、数十年後に価値を持つような基礎研究も、どちらも大事にしたいと思います。また、理屈抜きで面白い成果、わくわくする成果、びっくりする成果を出したいと思います。面白いかどうかは理屈じゃない。

また、一番重要なのは研究成果ではなく、皆さんと私のEnjoyと成長です。

教育と運営の方向性

上記のように楽しむためには、全力を尽くしましょう。

全力というのは不眠、不休ということではありません。新しいアイデアのためには寄り道や休養がとても重要ですから。前の研究室では、体育会系の部活出身者が見事な成果をあげることが多かったのですが、彼らは全力の尽くし方を知っているのでしょう。企業が体育会系出身者を採りたがる気持ちも分かる気がします。また、よく宴会をしている代は、良い卒論や修論を書いていた気もします。ディスカッションなくして良い研究無し。

私のアイデアの実現を学生や研究員に手伝わせるというスタンスは取りません。最初は併走しますが、あとはあなたの研究です。

ただし、一つだけ制限があります。サイエンス(科学)においては、世界で最初のものだけしか認められません。研究成果とは世界初のものだけです。世界で最初のものを生み出すためには全力を尽くすしかありません。研究テーマ例を提示はしますが、それは最先端のどこかへと連れて行くことだと思ってください。

最近の例では、元上司はゴルバチョフの主催するXXフォーラムに呼ばれ、後輩は元国連事務総長アナンが作るYYフォーラムのための参考資料を請求されました。私は昨秋、ノーベル化学賞のクルッツェンと30分ぐらいワインを片手にしゃべる機会もありました。こうなったのは、たまたま運が良かっただけなのですが、これから参入する人にはチャンスです。

世界一を狙って勝負できる舞台が整っています。こういうチャンスは、なかなかありません。

唯一のオリジナリティを世界に問うという点において、美術芸術などの作品を世に発表するのにも似た作業となります。

配属後、勉強すべきこと

読むべき論文(参考文献)のほとんどは英語だと思ってください。英語帝国主義は好きではありませんが、困ったことに、英語で発表し世界中の人に読んでもらい引用されねば意味をもちません。

最初は一つ読むのに一ヶ月かかるかもしれませんが、慣れれば何てことはありません。(私も大学院に入るまで英語の論文なんて読んだことありませんでした。英語はずっと大嫌いでした。初めてした英会話も大学院になってから、留学生相手に片言で。。。最初に論文を英語で書いたのは29歳。。。まあ何とかなるものです。たぶん同じ年齢で比べたら、皆さんのが上手でしょう。)

簡単なコンピュータ(UNIX/LINUX上で)のプログラムは必須です。でも、現時点で何も知らなくても大丈夫です。興味さえあればOK。もちろん、私より得意なオタクも歓迎します。数学は得意でも不得意でも構いません。

現地観測・調査に関わる人もいるでしょうし、関わらない人もいるでしょうが、世界や日本の色々な場所を興味をもって訪れることは重要です。どんどん旅をしてください。世界の様々なニュースにも興味を持ちましょう。東南アジア(タイやベトナム)や中国などの現場を対象とした研究をしたいという人も歓迎します。

他大学からの大学院受験を考えている人へ

私は東大から来ましたし、こちらで配属される卒論生は東工大生ということになります。「私なんかとてもついていけない」と思うかもしれません。最初から諦める場合は結局、無理かもしれませんが、過去の状況を一応、お伝えしておきます。

東大に居たときは、本部ではなく外にある研究所にいました。そのため、他のページで紹介するような世界的な研究成果は、芝浦工大、早大、東北大などの卒業生によって生み出されたものです。いわゆる東大生の成果も半分近くはありますが、彼らの(実は私も)卒論時代は水以外の研究室の所属でした。農学部出身もいました。文系もいました。留学生は、そもそも東大とも東工大とも関係ないところの出身でした。

また、ここ数年の後輩の何人かは、今は、カリフォルニア大、NASA、フランクフルト大、ウィスコンシン大、ワシントン大などにいます。日本のXX大がどう、なんてのは気にしてもしょうがないと言えるでしょう。

その他

いろんな本(雑誌等もOK、マンガだって!)を読みましょう。

直接研究に関係のあることだけ勉強しているのではつまらない。色々な本を研究室に並べたいと思っています。本だけに限らず、皆さんが新しい文化を持ち込んでくれることも期待しています。

立場も年齢も関係なく、どんどんディスカッションしましょう。どんな優秀な人でも、ディスカッション無しでは大した研究はできません。

研究面においての研究室の本質的役割は、細かい技術の伝達という面もありますが、最大の役割は「こういう研究が面白い」「この研究はつまらない」という感覚を共有することだと思います。これだけは論文からも教科書からも伝わりません。

そう、面白い研究をしましょう!